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畠山佳菜子選手独占インタビュー「剣から弓へ。元剣士の挑戦」

       
選手インタビュー

成興技研所属・畠山佳菜子。剣道一家で育ち、稽古に明け暮れていた少女は突如、高校入学とともに剣を弓に持ち替える。
その後、高校時代に目立った戦績は残していないものの、強豪・愛知産業大学に進学し数々の全国大会で活躍。岩手県代表として出場した国体で、同県女子としては初となる団体優勝を飾った。
畠山選手はDYNASTY設立当時からブランドを支えるフィールドプレイヤーのひとりでもある。
現在、地元を離れて静岡県で競技生活を送る彼女に、社会人となって初のインタビューをおこなった。
アーチェリーとの出会いから大学時代、卒業後の競技生活まで、これまで語られてこなかった畠山佳菜子の素顔に迫る。(インタビュー・本文:服部 亮)

きっかけはアニメ。弓で戦うヒロインに憧れました

まず、アーチェリーを始めたきっかけから教えてください。

岩手県の盛岡白百合学園高等学校で始めました。
もともと中学校まで剣道をやっていたんですが、進学した高校の剣道部が強豪校で、ここの稽古についていくのはちょっと大変だなぁと……。
ほんとは弓道をやってみたかったんですけど、学校に弓道部がなかったのでアーチェリー部に。

もともとは弓道部志望だったんですね。弓そのものに興味があったのでしょうか?

アニメの話になっちゃうんですけど、一番影響があったのは「犬夜叉」(高橋留美子原作。現代の女子中学生・日暮かごめが家の井戸から戦国時代にタイムスリップしたことで四魂の玉の欠片を探す旅に巻き込まれる。2000年から2004年まで日本テレビ系列で放送され、のちに同系列にて完結編が2009年から2010年まで放送された)で。
ヒロインが弓で戦うのが格好いいなって。
子どものころテレビで観てた影響で、弓というものにずっと憧れがありました。武道つながりで、剣道とも通ずるところにも魅力を感じたのかもしれません。

高校に弓道部はありませんでしたけど、アーチェリー部の体験で風船割りをやらせてもらって、やっぱり弓って楽しいなと思って入部しました。
「案外簡単かな」って最初思ったんです(笑) でも始めてみたら予想より全然難しくて、思ったように当たらないし……つらかったです。

剣道は小学校1年生から。剣道での経験はアーチェリーにも活きています

剣道は長くやってこられたのですか?

剣道は小学校1年生から中学校の部活を引退するまでやってました。
父が剣道をしていて、母を除く家族全員剣道をやっていました。兄弟は3人で、兄が通っていた剣道クラブについていった際、同じように家族の付き添いでクラブに来ていた同い年の子と仲良くなり、その子と一緒に始めました。
父に稽古をつけてもらうこともありましたが、ほとんどはそのクラブの先生方に指導していただきました。

私(取材子)も小学校から中学まで剣道をやっていたのですが、畠山さんが思う剣道の魅力や、苦労した部分はどんなところでしょうか。
差し支えなければ段位や実績などをうかがってもいいですか?

段位は二段です。剣道での実績は……すみません、あまり覚えてないですね(笑)
団体戦では副将(一般に剣道の団体戦は5人チームで戦い、1番手の選手から順に先鋒・次鋒・中堅・副将・大将と呼ぶ)を任されることが多かったです。
相手から二本取って勝った(面・小手・胴・突きのいずれかの有効打突を二本先取、または時間内に相手より多く取った選手が勝利となる)ときはやっぱり気持ちがいいです。
反対に大変だったのは暑さ・寒さ対策。どのスポーツでも、程度の差こそあれ、そうだとは思うんですけど。
あとは、相手に(防具のある場所を)外されたときの痛さを我慢するのがつらかったですね(笑)
長年剣道をやっていて体幹がついていたことはアーチェリーにとってもプラスでした。

二段は中学生の年齢で取得できる最高段位です。小学校からやっていたとはいえ、中学生が容易に取得できるものではありません。
キャリアも実力もある剣道家だったと思うのですが、剣道をやめることに周囲からの反対はありませんでしたか?

中学生のころは同級生にも先輩にも恵まれて楽しく剣道をすることができました。私自身、本当に剣道をやめるとは思っていませんでしたし、高校剣道部の印象次第では進学後も続けていたと思います。ただ、ほかの中学校含め同級生に上手な方々が多かったので、(高校剣道で)そうした人たちのなかで上位を狙っていきたいと思えなかった部分もあります。
父からも母からも、剣道をやめることについて反対はありませんでした。
アーチェリーを始めたいと相談したときも、「そうなんだ。頑張ってね」と応援してくれました。新しいことに挑戦することを受け入れて応援してくれた両親、家族には感謝してもしきれないです。

「70mラウンド500点目標」から国体優勝へ

すでにスポーツマンとしては長い経験をもっていた畠山さんですが、アーチェリーは始めてすぐに上手くなりましたか?

そんな、全然ですよ!
練習量はあったほうだと思うんですけど、実力にはうまく結びついていなかったと思います。部員数も他の競技と比べるとそこまで多くなく、同学年は最初は3人で、引退するころには2人でした。
2年生のときに1度だけインターハイに出ましたが、500点が目標(70mW)くらいのレベルでしたから本番も下のほう(の順位)でした。

その後、愛知産業大学に進学されました。愛知産業大学を選んだ理由はどんなところだったのでしょうか?

アーチェリー続けたいなとは思っていたんですけど、どこかいいかなって考えたときに、顧問の先生からいくつか選択肢を出していただいて、そのなかに愛知産業大学がありました。高校の同じアーチェリー部の先輩が在籍していたこともあり、愛産大に行こうと決めました。
高校生のころに目立った成績はありませんでしたが、顧問の先生が推薦してくださり、入学が決まりました。

入学後は瞬く間に上達し、全国大会で活躍するようになりました。
高校生のころとは何が変わりましたか?

高校生のころはがむしゃらにやっていた感じでした。
それと比較して、大学に入ってからはアーチェリーが楽しくて、暇さえあれば常に練習しているような感じでした。
同期も10人近くいて、高校の部活動とは規模も環境も違います。
1年生のころは射型もひどくて驚かれましたね(笑)
2年生の後半くらいですかね、そのあたりから国体とか全日本とかに出られるようになりました。

きっかけと言われると……。
私としては練習量が増えたこともありますが、道具を変えて何かが変わったんじゃないかなと思います。他には、射ち方で肩のラインをしっかりとるようになったことです。
そこから、練習でも結構あたるようになって、いろんな人と勝負したりして。
それまで練習では400点台でしたが、620点台まで射てるようになりました。試合では、全日の点数を取りたくて兵庫の試合に参加した際に640点台が2本も急に出て自分自身とても驚いたのを覚えています。

そして2年生で出場した愛媛国体で、岩手県チームでは初となる女子団体優勝を飾りました。

愛媛国体では、予選は雨で点数もボロボロで半泣きでした。先輩方に助けられました。
団体戦のときは決勝までずっと不安で、岩手から応援に駆けつけてくれた母や、知っている人たちの顔を見て緊張をほぐそうとしてました。
決勝戦前の公式練習では全然当たらなくて「やばい!」と思ってたんですけど、一方で「初出場でここまで来られたのなら大丈夫じゃないか」って少し開き直ったような気持ちもあったと思います。
そのおかげか、本番はミスも少なく、優勝することができました。嬉しかったです。

愛知産業大学アーチェリー部の魅力はなんといっても練習環境の充実度

大学ではどんな練習をしていましたか?

基本的にはひたすら射ちこんでました。
部全体として決まった練習の時間はあるんですけど、講義の空きコマに射場に行ったりもできました。高校時代より練習量が増えたこともプラスになったと思います。
他にも、男女問わず勝負し合ったり射ち方を見合ったりして、雑談もアーチェリーの話が多かったと思います。コーチ陣にも積極的に聞きに行くように皆がしていました。

愛知産業大学アーチェリー部はなんといっても練習環境が一番の魅力だと思います。愛産大は24時間練習できる場所ですし、コーチは選手が理解できるまで丁寧に説明してくれます。私のように、点数をぐんと伸ばすことができた選手がたくさんいます。学業との両立についても、私がいた経営学科はカリキュラムやスケジュールの面でも両立しやすいと思います。SNSアカウントで情報発信しているので練習の様子もイメージしやすいと思いますし、こちらでも紹介しているとおり、レベルに応じて授業料の免除制度などもあります。ほかの大学と比べても幅広い選手の方が挑戦しやすい大学だと思います。

大学ではコーチにどんなことを指導されましたか?

射ち方の流れを細かく指導していただきました。それまで身体がぎこちなくバラバラに動いていたのが、射ち起こしからフォロースルーまでひとつの流れのなかで射てるようになりました。
特に、丁寧に射つこと、肩のラインを取ること、弦サイトをきちんと合わせることを教わりました。
自己ベストが出たときは、肩のラインをまっすぐ的に向けるようにして、くの字に開かないように指導していただいたあとでした。
自分では取りかけがしっくりこず気になることが多かったので、人差し指と中指をしっかりかけて、小指を首につけるように教わりました。

順調に実力を伸ばしていったかに見えた畠山さんですが、3年生以降は目立った成績を残すことができていません。
何かがあったのでしょうか

そうですね、2年生の国体優勝以降は全国大会での成績は残せていません。
同じ年の全日本ターゲットも出場しましたが、3年生のころからクリッカーが上手くコントロールできなくなって、思うようにいかない時期が続きました。
練習のときから不調が少しありました。されに試合中にクリッカーが切れていないのにカチッと鳴ることがあり、それが原因で射つのが怖くなって身体が縮こまってしまいました。
コーチと相談して射ち方を変えて試したり、ビビッてしまうのを直すためにたくさん射ちこんだり試合にも参加しました。
コーチや同期のみんなに助けていただき、完全克服とはいきませんでしたが、克服できたと思います。
あのまま一人でやっていても克服できなかったと思うので、試行錯誤してくださったコーチや支えてくれた同期にはとても感謝しています。

大学進学後、コーチのアドバイスで弓具を変えることも

弓具のこだわりはありますか? また、DYNASTYの製品でお気に入りがあったら教えてください。

高校生のころはWIN&WINのCXTを使っていました。
大学1年生のとき、琢磨さんに見てもらっているときに「ハンドル変えたほうがいいんじゃない?」って言われて、試しに琢磨さんのGMXを射たせてもらったらそっちのほうが良かった。それで(後継機種の)エピックを購入しました。エピックは点数が出たときに使っていたということもありますし、シルバーのカラーと形が好きでした。その後、エピックはネジ部分が壊れてしまって(さらに後継機の)エクシードに変えました。エクシードのスレートカラーもお気に入りです。

DYNASTYさんの製品で気に入ってるのはウェイトです。たまにぶつけてしまったりするのですが、(ペイントのカラーウェイトと違って)傷で色が剥がれたりしないですし、なによりあの色なのでどんなロッドもカッコよくなります!
ENIGMAスタビライザーはブルーのロゴがほかにはない雰囲気で気に入ってます。
以前いただいたプレイヤーゼッケンも好きで、私はハンドルに巻いて使っています。

大学のコーチや環境に助けられていたことに、改めて気付かされました

卒業後は成興技研様に就職され、競技を続けていらっしゃいます。これまでの経緯を教えてもらえますか?

私は一般の就活生のような、就職活動らしい就職活動はしていません。
今の私の住まいがある静岡県では、静岡県アスリート等雇用支援という制度があり、静岡県スポーツ協会の支援のもと、私の所属先の成興技研をはじめ静岡県内の様々な企業がアスリートを募集しています。
静岡県のアスリート支援については、琢磨さんに「こういうのがあるよ」って教えていただいて知りました。
このまま競技生活を終えるのは嫌だなと思っていたので、制度を利用して静岡県でアーチェリーを続けることに決めました。

入社の決め手は何でしたか?

最初に紹介していただいたのは介護関係の企業様だったんですけど、練習前には体力的にちょっとキツイかなって。
そのあと、静岡県内の大会で成興技研の河合啓太さんに声をかけたところ、とんとん拍子に話が進んでいきました。会社のすぐ横に射場を作るというお話を聞き、練習環境の面に魅力を感じました。

お仕事はどんなことをされてますか?

会社では主に事務を担当しています。
1年目のときは正直すごくしんどかったですね。アーチェリーをやめようかな、とちょっと思ったくらいでした。点数も出ないし、仕事だけでへとへとでした。
学生時代アルバイトもほとんどしてこなかったので、働くということ自体が今までにない体験でした。それに、大学時代と違ってコーチもいません。全部自分で考えてやっていかなきゃいけない。そこが難しいなぁと。大学のアーチェリー部の環境がすごく自分に合ってたんだなって改めて実感しました。

異動もありましたが今年2年目になって、仕事も少しずつ覚えてきて、1人でする練習にも慣れてきました。今でも寂しさを感じることはありますけど……。
最初は定時後からの練習だったのですが、私から練習時間を早めたいと会社にお願いしたときにも、快く受け入れてくださいました。社長ふくめ会社のみなさんがアーチェリーにとても興味を示してくださり、競技活動を応援していただいています。とても嬉しいことですし、感謝しています。

静岡での生活はいかがですか?

アーチェリー場の環境はすごくいいと思います。
驚いたのは、日常的に風速9mだとか、風の強さが天気情報に表示されることです!
新型コロナウィルスの影響もあって県内の観光がまだできていないのですが、茶畑は綺麗だなって思います。状況が落ち着いたら色々な場所に行ってみたいと考えています。
好きなグルメは、静岡といえば誰もが知っているさわやかです!

後悔のないよう、自分自身のための選択をしてほしい

最後に今後の目標と、かつてのご自身と同じように新たな環境でがんばっている新社会人にエールをお願いします。

まずは全日本ターゲットに再び出場することが目標ですね。
自己ベストも更新したいです。
社会人になり、休みをしっかりとる日が増えましたが、練習量が特に大切だと感じます。
体力面の管理の重要さはとても実感しています。
ひとくちにアーチェリーを続けるといっても様々な方向からの関わり方があります。趣味でも、プロでも、サポートの立場でも、色々なアプローチがありますし、一方でアーチェリーに区切りをつけるのもいいと思います。
社会人は(卒業などの区切りがなく)永遠だと考えているので、後悔がないよう行動していくことが重要なんじゃないかな。
なにより自分が楽しめる道を選択することが大切!
一緒にがんばっていきましょう!

本日はお時間いただきありがとうございました。

                   

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