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アーチェリーをはじめてみたい!必要な道具や費用、選び方は?

       
アーチェリー記事

アーチェリーを始めるには何が必要?

ふと「アーチェリーをはじめてみたい」と思い立ったとき、子供が急にアーチェリーをやりたいと言い出したとき、競技経験がないのにクラブの顧問に任命されたときなど、とりあえずインターネットで検索してみたはいいけれど、初歩にあたる部分の情報の少なさに心細くなっている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではそんな、「アーチェリーのことなにもわからない!」という全くの初心者の方から、今一度基本をおさらいしたい中級者の方までが知識を身につけ、安心して必要な道具をそろえていけるようお手伝いさせていただきます。

アーチェリー初心者に必要な道具

アーチェリーショップの通販サイトやカタログには、数多くの商品があり、何をどのように選んだらいいのか、そもそも何が必要なのか、見れば見るほど疑問でいっぱいになることと思います。そんな初心者の方、初めてアーチェリーに触れる方に向けて解説していきます。

アーチェリー初心者がまず揃えるべき道具

・ハンドル
弓本体の土台となる部分です。
・リム
弦を引いたときにしなり、矢を飛ばすバネの役割をします。
・サイト
的を狙うための照準器です。
・プランジャー
弓を射った際に矢を安定して飛ぶように調整する役割をします。
・レスト
矢をつがえた際に乗せる部分です。
・ストリング
弦です。両端が輪になっていて、リムの先端にかかるようになっています。
・スタビライザー
弓を安定させ、射ったときの振動を吸収します。
・アロー
弓によって飛ばされ、的に刺さったところが得点になります。
・ボウスタンド
弓置きです。
・スリング
弓を射った際に弓が地面に落ちないようにする道具です。
・アームガード
弓を射った際にストリングが腕に当たって怪我するのを防ぎます。
・チェストガード
弓を引いた際にストリングが衣服に引っ掛かるのを防ぎます。
・ストリンガー
弓にストリングを張るための道具です。
・Tゲージ
弓のチューニングや、組立時のチェックに必要な道具です。
・クィーバー
矢を入れて持ち歩くための筒です。
・ボウケース
弓やその他の道具を入れて運搬するためのケース。

アーチェリー初心者に必要な道具の解説

必要な道具の役割が分かったところで、ひとつひとつについて詳しく見ていきましょう。
気になる相場価格や、これからアーチェリーをはじめようとするビギナーがどんな観点から道具を選んでいったらいいか解説していきます。

ハンドル

【相場価格1~17万円】
【初心者おすすめ価格帯1~5万円】

リムやサイト、プランジャーやスタビライザーなど、弓を構成するほとんどのパーツがハンドルに装着されます。プラスチックや木でできたハンドルもありますが、アーチェリーを競技として取り組むなら、金属製またはカーボン製のものを使用することをおすすめします。

ハンドルはすべての弓具の土台です。競技としてアーチェリーをする場合、競技形式の関係で最低でも30m、大会に出るなら70m離れた的まで矢を飛ばさなくてはなりません。つまり、的まで矢を飛ばすエネルギーに耐えられる頑丈さが、ハンドルには必要になるのです。現在、競技用の上位モデルではアルミニウムを素材としたアルミニウムハンドルと、カーボン繊維を素材としたカーボンハンドルが主流となっています。

アルミニウムハンドルには7075アルミニウム合金など、航空機等に使われるしなりに強く非常に硬いアルミニウムが採用されています。7000番台の合金では硬すぎる、あるいは高価であることから、初心者向け~中級クラスのハンドルには6000番台以下のより柔らかいアルミニウム合金が使用されます。また、アルミニウム合金の加工方法には削り出しと鋳造があり、上位モデルでは削り出しが採用されることが多いです。削り出しの場合、コンピュータ制御されたマシンでアルミニウムのブロックを削っていくことでハンドルの形を作り出します。元々が単一の固体であるため気泡が発生せず強度に優れ、マシンの精度が良ければハンドルごとの小さな誤差も最小限に抑えることができますが、反面、加工に時間がかかり、削った部分のアルミニウムはロスになるため鋳造と比べるとコストが大きくなります。鋳造は型に溶かした素材を流し込んで成型する方法で、低価格のハンドルの多くがこの方法で製作されています。そうしたモデルは耐久性や精度では高価な削り出しハンドルにやや劣りますが、コストパフォーマンスの面では有利に働きます。また、ポンドが低く弱い弓の場合は、高剛性の削り出しハンドルよりも振動の減衰やフィーリングに優れる場合もあります。

また、アルミハンドルの塗装ではアルマイト(アナダイズド)とペイントの両方が採用されています。アルマイトは1929年に日本の理化学研究所で発明された技術で、人工的にアルミニウム表面に酸化被膜を作り、染料を吸着させて着色します。アルマイト塗装は耐久性や腐食性に優れることに加え、表面に塗料を乗せるペイントのようにハンドルが分厚くなることで重量やネジ穴に干渉する心配がありませんが、コストがかかるため、多くのメーカーでは高価な上位モデルのみに採用しています。ペイントは従来の塗料を吹き付けるなど上から乗せる形で着色する方法で、クオリティに差はありますが、低価格ビギナー用モデルからフラッグシップモデルまで幅広く採用されています。耐久性ではアルマイトに及びませんが、基本的にはどのような色であっても着色することができます。アルマイトでの発色が困難なホワイトはどのメーカー、価格帯でもペイントです。また、塗料によって柔らかい膜ができるため、感覚が敏感な選手ではアルマイト塗装の同モデルのハンドルよりも振動が小さく感じられることがあります。

カーボンハンドルでは素材にグラフェン、ハイモジュラスカーボン、クロスカーボンなどが採用され、振動吸収性に優れているのが特徴です。かつては耐久性や精度などの面で課題が多かったカーボンハンドルですが、長年の研究開発の末、競技に耐える耐久性や精度を持つに至り、2007年にWIN&WIN社から発売されたイノカーボンハンドル以降、世界大会で数々のメダルを獲得するようになりました。製法としてはCFRP(短炭素繊維強化プラスチック)の外枠をつくり、そこに長繊維を使用したプリプレグを充填する方法であるとされています。アルミニウムと異なりカーボンハンドルは素材そのものが軽いため、芯材やフォーム材などの比率を変えることによって重さや重心位置の調整をしています。カーボンハンドルの製造には特殊な技術や知見が必要なため、アルミニウムハンドルと比較して、製造しているメーカーはごく限られており、なかでも韓国のWIN&WIN社が製造・販売するモデルに需要が集中しています。アルミニウムハンドルのように1~2万円クラスの低価格のモデルは少なく、エントリークラスのモデルでも3~4万円以上と、アルミニウムハンドルでの中価格帯が底値となるのが現状です。以上のことから、最高級クラスのフラッグシップモデルを視野に入れている場合を除くと、アルミニウムハンドルのほうが選択肢も広く、同価格帯のなかで比較的上位のモデルを選択することもできるでしょう。カーボンハンドルではアルミニウムのようにアルマイト処理ができないため、塗装はペイントが採用されます。高精度のカーボンハンドルは科学技術の結晶とも言えますが、従来から存在するアルミニウムハンドルよりも的中精度に優れているかというと一概にそうとは言えず、今なお多くの世界新記録がカーボンハンドルとアルミニウムハンドルの両方で更新し続けられています。現状では選手のフィーリングの好みや経験則としか言えず、アルミとカーボンのどちらが的中精度において優れているかという判断を下すことは非常に困難です。

素材の違いのほか、ハンドルによってリムの取り付け方法に違いがあり、ILF式とフォーミュラ式の大きく2種類に分かれます。このうち、競技用モデルの大半がILF式を採用しています。フォーミュラ式はアメリカのHOYT社が提唱し、HOYT社といくつかのメーカーが採用している方式で、フォーミュラ専用のリムのみ取り付けることができます。これらのリムの違いについては後述の「リム」の項目で詳しく解説しますが、フォーミュラ式のハンドルを選択した場合、リムの選択肢がかなり限られたものになることは覚悟しておかなければなりません。

サイズは23インチのショートハンドルと、25インチのロングハンドルが一般的ですが、近年はロングハンドルが多く、ショートハンドルはあまり見かけなくなっています。これはリムの性能が良くなったことで、選手の腕の長さに対して長い弓(リムの曲がり角度が小さい弓)でも矢を遠くへ飛ばすことができるようになったこと、重いアルミニウムアローではなく軽いカーボンアローが主流になったことなどが要因と考えられます。しかしながら、アーチェリーに取り組む選手が必ずしも高いポンドや扱いのシビアなカーボンアローを使うわけではなく、身長が150cmに満たない選手が効率よく矢を射つのに、ショートハンドルが役立つこともあります。上級モデルの一部ではエクストラロングハンドルと呼ばれる27インチのハンドルもありますが、2010年代以降、27インチハンドルがラインナップされるケースが少なくなったこともあり、2m近い高身長の選手であっても大半が25インチのロングハンドルを使用しています。しかしながら、2020年頃から再びエクストラロングハンドルがラインナップに復活するメーカーが出てきたほか、さらに長い29インチのハンドルを発売したメーカーもあり、注目を集めています。反対に、エントリーモデルでは小学生以下でも使用できる21インチの非常に短いハンドルが用意されている場合もあります。近年のハンドルはロングハンドルで1,200~1,300グラム前後、ショートハンドルで1,000~1,200グラム前後の重量が一般的になっています。

結論として、迷ったらILFの25インチハンドルにしておくのが無難と言えます。アルミニウムハンドルかカーボンハンドルかについては、カーボンハンドルの上位モデルが10万円前後であることを踏まえて、可能なら候補に加えましょう。中途半端にエントリークラスのカーボンハンドルを買うなら同じ価格帯のアルミニウムハンドルのほうがモデルとしては格上で信頼性も高いことが多い……というのは筆者の個人的な考えですが、一定の共感は得られるのではないかと思います。ハンドルについては、予算があれば最初から上位モデルを使っても良いとよく言われます。はじめから最高級のハンドルを使っても実際に問題なく上達することも多いですが、ハンドル本体の重さについては少し気にしたほうが良いでしょう。近年の上位モデルの多くは最も一般的な25インチサイズで1,200~1,300グラム前後の重さが主流ですが、小・中学生や筋力のない方には重すぎる場合があるからです。

ILFのハンドルをチェックする

フォーミュラのハンドルをチェックする

初心者向け低価格ハンドルをチェックする

リム

【相場価格1.2~15万円】
【初心者おすすめ価格帯1.2~5万円】

リムの両端にストリングをかけてしならせ、指を離すと同時に蓄えられたエネルギーを使って矢を飛ばします。リムは木やグラスファイバー、カーボンなどの層がいくつも重なってできており、メーカーはこれらの差材の種類や割合、厚みなどを変えることで、矢にエネルギーを伝える効率や引き心地などを変えています。アーチェリーではこのリムの強さのことを「ポンド」という単位で表し、25インチのハンドルにリムを取り付けてグリップの一番深いところ(ピボットポイント)から26と1/4インチ引っ張ったときの強さをリムのポンドとして記載しています。このリムに書いてあるポンドのことを「表示ポンド」と呼び、実際に選手が矢を放つ位置まで弓を引いたときのポンドを「実質ポンド」と呼びます。表示ポンドと実質ポンドは必ずしもイコールではなく、メーカーは適正なセッティングで28インチ前後引いたときのポンドを表示ポンドとして表記しています。そのため、その長さより長く引けば表示ポンド<実質ポンドとなり、それより短く引けば表示ポンド>実質ポンドとなります。ポンドの出方はメーカーやモデル、製品の個体差によっても多少異なります。

長さにはショート(S)、ミディアム(M)、ロング(L)サイズがあります。25インチのロングハンドルに取り付けた場合、弓の全長はショートリムで66インチ、ミディアムリムで68インチ、ロングリムで70インチとなります。23インチのショートハンドルに取り付けた場合はショートリムで64インチ、ミディアムリムで66インチ、ロングリムで68インチが弓の全長となります。ストリングの選択やチューニングの際に必要になりますので、自分の弓の全長は必ず把握しておきましょう。また、ハンドルのリム取付け用ボルト(リムボルトまたはティラーアジャストメントボルトなどと呼ばれます)の締め込み具合を変えることで引いたときのポンドを最大10%前後変化させることができますが、あくまでもチューニングのための機構ですので、その範囲を逸脱するほどボルトを締めたり緩めたりすると故障の原因となり危険です。また、買い替えたくないからという理由で最初から高ポンドのリムを買ってしまうと身体を壊してしまいかねません。そのときどきの身体や体力に合わせたリムを使うことが上達の近道です。

リムの種類には大きくわけてグラスファイバーを主体とした「グラスリム」と、カーボンを主体とした「カーボンリム」があります。グラスリムは飛んでいく矢のスピード(矢速)は出ない反面、しなった部分がゆっくりと返っていくため扱いやすく、また安価で入手できます。一方、カーボンリムはエネルギー伝達の効率が良いため、軽い力で引けて矢のスピードも出ますが高価です。カーボンリムにはさらにフォームコア、ウッドコア、バンブーコア等の種類があり、それぞれ引き心地が異なります。一般的に、フォームコアは引き心地が柔らかく矢のスピードが速い、ウッドコアは適度に硬い引き心地で安定感がある、バンブーコアはその中間的な感覚と言われており、選手の好みで選ぶことができます。どのコア材が優れているかという結論は未だ出ておらず、選手や指導者の好みや考え方等に合わせて選択されているのが現状です。選び方の考えとして、グラスリムはフォームの習得や筋肉ができていない初心者や児童が弱いリムを使用するには最適ですが、長距離を飛ばそうとするとカーボンリムよりもかなり高いポンドのリムが必要になり、本末転倒な印象が否めません。そのため、ある程度上達するまでは(「ある程度」の点数やフォームの習得度合いについては指導者の意見が分かれるところですが)安価で低ポンドのグラスリムを使い、中距離以上(50m~70m)を射つ段階になったらカーボンリムに移行すると良いでしょう。

もちろん、予算があるのであれば初めからカーボンリムを購入しても良いのですが、その場合でも初めの一本に最上位モデルを選択することには一長一短があります。各社多くの上位モデルのリムはスピードや安定性の高さをウリにしていますが、そもそものフォームが高いレベルで安定しているという前提なので、大きなミスを連発するようなレベルではそのスピードゆえにコントロールしきれずかえって外しかねません。しかし、ビギナーからミドルモデルに比べるとスピードが出るため、軽い力で長い距離を飛ばすことができます。あまり良い状況とは言えませんが今の日本の現実として、高校生は一年生からアーチェリーをはじめても翌年夏からインターハイの選考会で70mの距離を射たなければなりません。しかも予選は台風も活発になり始めた初夏です。たとえ強い風雨に曝されていようと、そこで的に矢が届かなければ、いくらフォームが素晴らしくともインターハイに出場することは叶わないということになります。価格の高いリムを使えば簡単に高得点が出るというものでは決してありませんが、短期間で長距離を射ることを余儀なくされる高校生アーチャーなどにとっては助けとなる場合がある、というのも事実です。コア材については、ポンドが低い場合や筋力に自信がない方はフォームコアを選択すると、同じポンドでもウッドコアに比べてスピードが出るので有利です。弓の強さを十分にコントロールできる場合は、引き心地が適度に硬く安定感があるウッドコアモデルもおすすめできます。また、一般的にウッドコアのほうがリムのねじれに対する耐久性が高いと言われています。バンブーコアについてはどこのメーカーでも選べるという状況ではありませんが、HOYT社のリムを選択する場合はそもそも上位モデルにバンブーコア以外の選択肢がありません(2021年時点)。イメージとしては、引きが柔らかいウッドコアという認識で大きく違わないかと思います。ちなみにHOYT社のバンブーコアに使われている竹は日本に自生している竹とは異なる南米原産種のようで、同じ弓でも和弓とは素材が異なります。

リカーブハンドルのリム接合部分の機構はHOYT社が開発し、2010年発売のRXハンドル以降採用しているフォーミュラ規格と、それ以外のILF規格に分かれます。ILFはInternational Limb Fittingの略で、日本では国際標準リム取付規格またはユニバーサル方式とも呼ばれます。しかしながら、元々はこのILFもHOYT社が開発し、自社のハンドルに採用していたもので、かつてはHoyt Dovetail Systemを略してHDS規格と呼ばれていたため、現在でもHDSと呼ばれることもあります。日本国内では同じ規格であればHOYT以外のリムでもHDSと呼んでいましたが、実際にはHOYTが自社製品に持っている商標のため、世界の他メーカーがこれまでもHDSを指して呼んでいたILFに、国内の用語が遅れて統一された形となります。HOYTが発売したHDSが普及するにつれ、世界中のメーカーがこれと同じ方式のハンドルおよび、HDSに対応するリムを発売し始めました。YAMAHAが2002年にアーチェリー事業から撤退したことで、2000年代、世界のアーチェリー市場におけるリム取付けの規格はほぼ完全にHDSがスタンダードとなりました。HOYTはかつてのHDS=現在のILFに対し「グランプリ」というシリーズ名をつけて呼んでいますが、これも同じものを名前を変えて呼んでいるにすぎません。つまり、ILFとHDSとグランプリ(GP)は全て同じ方式ということになります。現在はかつてのHOYTが提唱したILFと、近年HOYTが進めているフォーミュラが競技用リムの2大規格となります(レジャー用や木製、樹脂製の練習弓ではハンドルに直接リムをボルト留めする方式も存在します)が、初心者の方がどちらを選択したらよいかと聞かれたらILFのほうをおすすめします。理由はハンドルの項でも触れた通りで、ILFのほうが圧倒的にモデルの選択肢が多く入手もしやすいからです。特に初心者や小中学生におすすめの低価格のリム(3万円以下)や10~20ポンド台前半の弱いリムともなると、現行のメーカーラインナップでは、フォーミュラリムはほぼ手に入らないと言っても過言ではありません。一方、30ポンド以上のリムを引くのに十分な筋力に加えてそれなりの予算があるのであれば、フォーミュラを検討に加えても良いでしょう。

ILFのリムをチェックする

フォーミュラのリムをチェックする

 

サイト

【相場価格2,000円~6万円】
【初心者おすすめ価格帯5,000円~1.5万円】

アーチェリーと和弓(弓道)の大きな違いにおいて重要な要素とも言えるのが、サイトと呼ばれる照準器の使用の有無です。アーチェリー競技(ベアボウ競技を除く)ではサイトを使用することができ、これが的中精度に大きく貢献しています。サイトピン(照準点)を上下左右に動かすことのできる製品が主流です。高価なモデルではハンドルから伸びるエクステンションバーにカーボンフォームが使用され振動吸収性に優れているほか、上級者の強い弓から放たれる衝撃にも耐えられるよう、頑丈にできています。

サイトは主に、的に照準を合わせるためのサイトピン、サイトピンを左右に動かすためのサイトボックス、サイトボックスを上下に動かすためのサイトエレベーション、サイトをハンドルに固定するサイトマウント、サイトピンを顔から遠ざけ2点間の距離の理論でより狙いを正確にするためのサイトエクステンションバーから構成されます。理論的にはサイトエクステンションバーは射手の目から離れれば離れるほど(的に近づけば近づくほど)狙いは精確になりますが、重量や視力、焦点が遠いほど腕の震えによってぶれて見えることなどの兼ね合いもあり、近年は9インチがリカーブ用サイトの一般的な長さとなっています。反対に、ビギナー用サイトではこれより極端に短いエクステンションバーが採用されている場合があります。エクステンションバーを長く出すと重くなるのでそれを防ぐ意味合いや、サイトピンをハンドルの近くに置くことで目の焦点をサイトピンに合わせやすくするなどの狙いがあります。また、長距離を射つことを前提としていないことも理由のひとつです。レジャーとしてアーチェリーの弓に触れてみたいという場合や、小学生以下でせいぜい10m程度までしか射たないという場合にはこれでも十分なのですが、競技として取り組むならエクステンションバーが長い(9インチ前後の)ものを選びましょう。エクステンションバーはハンドルに固定しているマウントのネジを付け替えることで、ハンドルから出ている長さを短く調整することもできますので、1台で短距離から長距離まで対応することができます。エクステンションバーの長さに関しては、1万円以上のモデルならまず調整できると考えてよいでしょう。

この他に、サイトブロックの調整方式でマイクロクリックタイプとラックアンドピニオンタイプで大きく2つに分かれます。マイクロクリックタイプは近年上位モデルで多く採用されている調整方法で、レールとなるサイトエレベーション上部のダイヤルを回すことで、ワンタッチでサイトピンの上下移動ができます。近年世界戦における2大トップシェアを誇るシブヤアルティマサイトAXCELアチーブサイトはどちらもこのマイクロクリックタイプのサイトです。一方、ラックアンドピニオン方式はビギナー用サイトから上級モデルまで広く採用されている調整方法で、ラックアンドピニオンの原理(ピニオンとよばれる小口径の円形歯車と、平板状の棒に歯切りをしたラックを組み合わせたもの。ピニオンに回転力を加えると、ラックが歯すじ設定された末端まで水平方向に動く:Wikipediaより)でサイトピンを上下に移動させます。代表的なモデルではシブヤデュアルクリックサイトやWIAWIS WS700サイトなどがこれにあたります。数千円から1万円程度までのモデルはほとんどがラックアンドピニオン式で、実売2万円を超える上級モデルで現在も採用しているのはWIN&WIN社から発売されているWIAWIS WS700くらいになってしまいました。日本におけるサイトのシェアはシブヤアルティマサイトとその後継機であるシブヤアルティマⅡサイトに集中しており、やや高価(実売3万円前後)なことを除けば初心者から上級者まで広くおすすめできます。近年世界のトップ選手が多く使用しているAXCEL社のAXCELアチーブサイトはさらに高価で、6万円前後。使用方法や基本的な仕組みはアルティマサイトに準じますが、アメリカ製サイトのウリである堅牢性を持ちつつ、日本製サイトに近い軽さを実現していることも魅力。ただし、アチーブサイトはサイトピンが別売りなので注意。予算を抑えたい場合にはシブヤデュアルクリックスタンダードサイトで1万5,000円ほど。エクステンションバーはカーボンではなくアルミ製ですが、初心者から上級者まで使えます(別売りのカーボンエクステンションバーに交換することも可能)。価格を安く抑えつつ長距離にも対応するサイトが欲しいならカーテルKサイトもあります。こちらで価格は5,000円ほど。品質や見た目の仕上がりは価格なりですが、シブヤデュアルクリックサイトと同じ仕組みを持ち、エクステンションバーの長さも調整できます。(※この記事を書いた後日、シブヤアルティマサイトの上位機種としてシブヤアルティマPROサイトが発表されました。)

リカーブ用サイトをチェックする

 

プランジャー

【相場価格1,000円~1.8万円】
【初心者おすすめ価格帯3,000円前後】

射った矢は直線ではなく何度も蛇行しながら飛んでいきます。曲げられたリムが戻っていく力によって押し出された矢はハンドル側に押し付けられながら飛んでいきますが、プランジャーはこれを適切な力で押し返し、矢の軌道を修正する役割を果たします。プランジャーのなかにはバネが入っており、弓の強さなどによって、このバネの強さを調整します。一般的に高価なモデルではこの調整の操作性や再現性に優れています。全日本選手権や国際大会で最も使用されているモデルはドイツのバイター社のバイタープランジャーで、1万5,000円ほどで販売されています。一方、高校生が初めて購入するプランジャーとして最も選ばれているのは渋谷アーチェリーのシブヤDXプランジャーかと思われます。こちらは3,500円ほどとバイターと比べてお求めやすい価格ですが、どちらも基本的な構造や性能は大きく変わりません。バイタープランジャーの優れている点は主に再現性やオプションパーツが豊富な点で、分解後同じ設定に戻したり、2本以上の弓を持っている選手が同じ設定で予備のプランジャーを簡単に用意することができたりするほか、チップ(矢を押し返す部分)やスプリング(チップを押し返す部分)を長さや硬さの異なるものに交換することができます。しかし、これらはどちらかというと複数本の弓を同時に運用したり、よりシビアなチューニングを必要としたりするトップ選手らにとって便利な部分で、一般のアーチャーが普通に使う分にはシブヤDXプランジャーで十分です。シブヤDXプランジャーからも長さや設定の異なる交換用チップが発売されています。チップは矢と接触して徐々に摩擦ですり減っていくため、およそ数千~数万射ごとに交換する必要があります。むしろプランジャーチップが適切に減っていかない場合、代わりに矢のほうが削られている可能性がありますのでチェックが必要です。最近では中国メーカーから千円を切るような安価なモデルも出てきていますが、練習しているうちにチップがすり減っていくのはどのプランジャーでも同じです。そのため、使い捨てとして割り切って使うならともかく、長くアーチェリーを続けるなら交換用チップを400円ほどで入手できるシブヤDXプランジャーのほうが、結果的には安く済むでしょう。

プランジャーをチェックする

 

レスト

【相場価格400円~8,000円】
【初心者おすすめ価格帯400円】

ハンドルに装着し、矢の発射台の役割を担います。現在、ハンドルへの取り付けには両面テープで張り付けるタイプが主流ですが、ハンドルのサイトマウント(サイトを取り付ける穴)やプランジャーホール(プランジャーを取り付ける穴)を利用して固定するモデルもあります。

素材としてはプラスチック製と金属製の2種類があり、どちらも広く使用されています。金属製レストのなかには矢を載せるアームの高さや開き角度を変えることができるものもあり、上級者に多く使用されています。安価なプラスチックレストは初心者用のイメージが持たれがちですが、硬い素材の金属レストよりも矢への負担が小さく、オリンピック等の世界大会に出場する選手のなかにも多くの愛用者がいます。HOYT社のスーパーレストに代表されるプラスチックレストは、ストリングを引く指先に力が入っていても矢がレストから落ち辛く、また安価なため、初心者の方にはこちらがおすすめです。プラスチックレストで最も使われているHOYTスーパーレストで400円前後、金属レストで最も使われているシブヤアルティマレストで4,000円前後です。金属レストのアームも摩擦で徐々にすり減っていきますが、シブヤアルティマレストは交換用アームが500円ほどで販売されています。金属レストはプラスチックレストよりも長持ちするのは違いありませんが、滑りが悪くなってきたり変形してきたりしたら早めにアームを交換しましょう。アームは事故で折れることもあるため、予備として常に1本持っておくのがおすすめです。アームの取り外しができない、またはアーム単体の販売がないモデルの場合は本体ごと交換するしかありません。

まずはスーパーレストで練習を繰り返し、とりかけの指が力まずに引けるようになったら金属レストへ変えることも検討してみましょう。金属レストにして矢がレストから落ちる場合はスーパーレストに戻し、再度指先に力が入らなくなるように練習を繰り返すのが一般的ですが、上記の理由から必ずしも金属レストに変えなければいけないわけではありません。移行できればすり減ったスーパーレストをこまめに張り替えなくてよくなるのは確かですが、プラスチックレストのほうが成績が良いなら金属レストに変える理由は特にありません。

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ストリング

【相場価格800円~4,000円】
【初心者おすすめ価格帯1,000円前後】

矢をつがえて取りかける弦です。アーチェリー用語としては「弦」または「ストリング」と呼ばれます。初心者用として一般的なダクロン弦のほか、ダイニーマやスペクトラといった高分子ポリエチレン系素材のものがあります。高分子ポリエチレン系素材の繊維は軽く伸びにくいため、矢を速く安定して飛ばすのに役立ちます。柔らかい弦ほどリムに与えるダメージが小さく、また指への負担や痛みも小さく感じられます。

初心者講習やレジャー施設で多く使用されるような木製やプラスチック製のハンドル、リムの場合はダクロン弦を使用してください。一方、金属ハンドルとカーボンリムを使用した現代の競技アーチェリーではダクロン弦は使用されなくなっています。高いポンドの弓では弦がどんどん伸びてしまい安定しないこと、重いため返りが遅いこと、水濡れに弱いことなどが理由として挙げられます。構造としてはダクロン弦でもポリエチレン系の弦でも同じで、これらの素材の繊維を16~22本程度いっしょに束にしてまとめ、リムにかかるように両端を輪の形状にして留めることでストリングになります。

ストリングの長さはハンドルとリムのセッティングやチューニングによってひとりひとり違うため、自分に合った長さのものを選択する必要があります。そのままよじって使用できる完成弦で2,000円前後が相場ですが、教室などでは講師の方が作成したストリングを安く提供してくれる場合もあるほか、素材や工具を揃えて自分で作成している選手もいます。また、62インチの弓(21インチハンドル+ショートリム)や72インチの弓(27インチハンドル+ロングリム)など特殊な長さでは市販の完成弦の入手が困難なため、自分で作るか、ショップへ特注で依頼することが必要な場合もあります。

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スタビライザー

【相場価格3,500円~6万円(センタースタビライザーのみ)】
【初心者おすすめ価格帯5,000円~1.2万円(センタースタビライザーのみ)】

ロッドとも呼ばれます。ハンドルに装着し、ドローイング中の弓を安定させると同時に発射時の衝撃を和らげブレを抑える働きをします。用途に応じて、センタースタビライザー、サイドスタビライザー、エクステンションバー(Mロッドとも)、アッパースタビライザー等の種類があり、選手の好みやフォーム、体格に応じて組み合わせや長さを選択します。また、センタースタビライザーやサイドスタビライザーの先端に振動を吸収するダンパーやウェイトを追加することで、弓のバランスや動きを変えることができます。ダンパーに加え、ウェイト(おもり)を追加して遠くに重量を配分することでバランスが取りやすくなります。

現在リカーブ競技で最も一般的なのはハンドルに3~6インチほどの短いエクステンションバーを取付け、そこからVバーという道具を使用して1本の長いセンタースタビライザーと、左右に2本の短いサイドスタビライザーの3方向に分岐させるセッティングです。当然ではありますが、スタビライザーは多く装着するほど弓が重くなります。闇雲に重くすれば弓が安定するわけではなく、弓のポンドや体格、筋力に合わせたセッティングにすることが重要です。筋力や弓の強さに対して重すぎるスタビライザーセッティングはフォームの上達を妨げるだけでなく、身体の様々な箇所の故障原因になります。

センターロッド1本で50ポンド近い弓を引くとかなり不安定ですが、20ポンドしかない弓にセンタースタビライザー、サイドスタビライザー装着して先端にウェイトまで付けたら重すぎます。まずはセンタースタビライザーのみで練習し、上達してポンドを上げていく過程で次第にサイドスタビライザーやエクステンションバーを追加していくと良いでしょう。近年では高額なモデルほど本体のカーボンパイプの材質が硬くなる傾向にあり、強いリムや、さらに高い負荷のかかるコンパウンドボウのパワーを吸収できるようになっています。しかし、弱い弓でそうしたモデルを使用すると却って振動が残り、性能を発揮できない場合が少なくありません。そうした意味で、リムの強さで30~40ポンド程度の弓なら、センターで1~2万円くらい、サイドで5,000~10,000円くらいの価格帯のモデルがおすすめです。あくまで参考ですが、長さは66インチの弓なら26~28インチセンター・10~11インチサイド・3~5インチエクステンション、68インチの弓なら28インチセンター・11~12インチサイド・4~5インチエクステンション、70インチの弓なら28~30インチセンター・11~12インチサイド・5~6インチエクステンションがひとつの目安になるかと思います。

センタースタビライザーをチェックする

 

【相場価格1~7万円(1ダース)】
【初心者おすすめ価格帯1万円前後(アルミ矢)】

アーチェリーの矢はシャフト、羽根、ノック、ポイント(矢じり)の4つのパーツからなります。矢は主としてシャフトの素材によって、アルミニウムでできたアルミニウムアローと、シャフトがカーボンでできたカーボンアローに大別されます。アルミニウムアローは重く遅いですが、ミスに寛容で的から外してしまっても破損し辛いため、入門用として広く使われています。一方カーボン矢は軽く速いため風や雨などの外的要因を受け辛く、全国大会以上の屋外の競技会での使用率は100%を誇ります。アルミニウム、カーボンともに1ダース数千円と比較的安価なものから1ダース5万円を超えるものまで様々な製品があり、特にカーボンシャフトはモデルごとの価格差が顕著です。最高級レベルのイーストン社X10シャフトA/C/Eシャフトなどは空力特性を考慮しており、シャフトの中央に膨らみをもたせ、両端に行くほど細くなる樽型形状をしています。また、Fivics社のFive-Xシャフトは形状こそ太さが一定のストレートであるものの、中央の素材が硬く、両端の素材が柔らかくなっており、樽型形状のシャフトと同様の効果をもつなど、高価なモデルには何かしらの“ウリ”があります。しかしながら、それらの性能を発揮させるためには射手にもそれなりの技術が求められ、誰でも簡単に点数のアップが望めるというものでもありません。

多くの教室やクラブでは、初心者はまず扱いやすいアルミニウムアローからはじめ、次にエントリー~ミドルクラスのカーボンアローに移行する方法が採用されています。目安のひとつとして、30m36射の合計300点がアルミニウムアローからカーボンアローに移行を検討するきっかけになるでしょう。アルミニウムアローで50mを射つことは不可能ではないのですが、弓の強さが30ポンド以上ないと安定して的の中心にあて続けるのはかなり難しいです。シャフトには「スパイン」という概念があり、シャフトの硬さを数字で表しています。シェアトップのEASTON社では28インチ離れた2つの支点の上にシャフトを置き、その中央に1.94ポンドの負荷をかけたときに何インチたわんだかを千倍した数値をスパインの数値に設定しています。鉛筆の芯がH、HB、B、2Bというふうに柔らかくなることをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。特にカーボンシャフトはスパインが細かく分けられて販売されており、数字が大きくなるほどシャフトは柔らかくなっていきます。

基本的に弓のポンドが高くなる(リムから矢に伝わるエネルギーが大きくなる)ほど、また矢が長くなるほど相対的に硬いシャフトを選択する必要があり、EASTON社をはじめとした各メーカーはモデルごとにシャフトの選択基準を設け、選手はその基準を参考にして自分の弓と腕の長さ(引き尺)に合わせた硬さのシャフトを選択しています。この基準を表にしたものをアローチャートまたは単にチャートと呼び、弓の実質ポンドと引き尺から適正なシャフトスパインを割り出します。一般にシャフトは弓から受けるパワーが強いほど、シャフトそのものが長いほど飛行中にたわみやすくなります。適切なシャフトを使用してもシャフトは多少たわみますが、このたわむ幅が大きすぎたり、反対に小さすぎたりすると矢の飛翔中の安定やエネルギー効率を損ない、結果として的中に悪影響を与えることになります。ただし、チャートや先に述べた原則はあくまで傾向や参考であり、選手ひとりひとりの体格や射ちかた、リムの選択や弓のチューニング様々な要因によって適切なシャフトは変わってきます。フォームや知識が身につくまでは、指導者やプロショップに自分の弓を持っていき、そこで相談するのが安心です。

アルミニウムシャフトではEASTON XX75 プラチナムシャフト(1ダース9,000円前後)やEASTON X7エクリプス(1ダース15,000円前後)が信頼性が高く、入手しやすいのでおすすめ。クラブで活動する高校生が初めて購入するシャフトとしても一般的です。カーボンシャフトではビギナーから中級者ではSKYLON PARAGONシャフト(1ダース15,000円前後)、中級者から上級者ではEASTON A/C/Eシャフト(1ダース35,000円前後)が精度の高さや入手性、価格とのバランス面からおすすめできます。そうして練習を続け、70m72射で650点を射てるようになってきたら最上位モデルのEASTON X10(1ダース50,000円前後)シャフトを検討に入れてもいいかもしれません。

シャフトのほか、羽根やポイントも矢の飛行に大きな影響を与えるパーツです。アーチェリーの羽根は「ベイン」とも呼ばれ、形や大きさ、素材が異なる様々な種類の商品が発売されています。ベインは主に硬い板状の「ソフトベイン」(または「ゴムベイン」とも)と薄くカールした形状の「フィルムベイン」とで大別されます。鳥の羽根などを利用したベインやそれを模した製品は精度にバラつきが大きいことや水濡れに弱いことから、日本で行われている形式のアーチェリー競技ではほとんど使用されません。ソフトベインは耐久性が高い反面、空気を巻き込みにくく回転しにくいため修正力の面ではフィルムベインに劣り、またフィルムベインよりも重いため矢の速度が遅くなります。フィルムベインはカールした形状で空気を掴んでよく回転するため修正力が高く、また軽いため矢速がプラスチックベインほど落ちません。反面、デリケートで折れや欠けが起きやすく、こまめなチェックと交換が必要になります。シャフトへの取り付けにはソフトベインには専用の接着剤や瞬間接着剤、フィルムベインには両面テープが使用されます。ソフトベインは1枚30~50円前後、40枚入りパックで1,500~2,000円前後が一般的です。代表的なAAEエリートベインで100枚2,000円前後。フィルムベインは基本的に1枚単位での販売はなく、50枚入りパックで1,000~3,000円前後で取引されています。普及率トップを誇るレンジオマチックスピンウィングベインで50枚入りパック1,500円前後です。ビギナーから世界トップレベルの選手まで広く使用されています。1本のシャフトに取り付けるベインの枚数は3枚です。

矢を弦につがえるためのパーツを「ノック」と呼び、大きく分けて①AAEプラスチックノックなど、対応するアルミシャフトの上から被せ、接着剤で固定するタイプ②EASTON Gノックなど、そのままシャフトに挿入するタイプ③EASTONピンノックなど、「ピンアダプター」と呼ばれるジョイントをシャフトに接着してその上からはめ込むタイプ④バイターアウトサートノックなど、対応するカーボンシャフトの外側に被せるタイプの4種類が各メーカーから販売されています。各モデルでSサイズとLサイズが用意され、自分が使用している弦の太さによって選択します。ビギナーから中級者が使用している太さの弦(14~18本弦)ならSサイズで対応できます。ノックは使用しているシャフトによって対応するモデルが変わります。EASTON XX75プラチナムシャフトやEASTON A/C/Eシャフトには丈夫で安価、入手もしやすいEASTON Gノックがおすすめです。手ごろな価格が魅力のSKYLONシャフトならEASTONピンノックやバイターピンノックなどが使用できます(別途ピンアダプターが必要)。アウトサートタイプのノックはビーマンとバイターから発売されていますが、トップ選手用モデルのEASTON X10シャフト用以外のサイズを在庫している店舗は稀です。

アーチェリーの矢じりは「ポイント」と呼ばれ、その重さは「グレイン」という単位で表されます。1グレインはおよそ0.064グラムです。ポイントはシャフト内部に挿入する部分の形状でブレークオフポイントとワンピースポイントがあります。ワンピースポイントは重量が固定ですが、ブレークオフポイントは本体の一部を切断することで重さの微調整ができます。多くのポイントはステンレス製ですが、X10など上位モデルのシャフト向けにタングステン製もラインナップされています。タングステンはステンレスに比べて比重が重く、同じ重量のステンレスポイントよりもポイント部分を小さく抑えることができるため、より矢の先端に重量を配分することができ、またその分同じ長さの矢に比べてシャフト部分を長くすることができます。X10用のステンレスポイントが1ダース3,000円前後なのに対し、タングステンポイントはその10倍の1ダース30,000円以上で販売されています。あくまでタングステンポイントはより高度なチューニングを求めるトップ選手向けです。ポイントの重量を何グレインに設定するかは、アローチャートでメーカーの推奨ポイント重量を確認することができます。

シャフトやノック、ポイントなどは店舗、モデルによっては1本単位で販売されていることもありますが、基本的には12本を1ダースとした単位で販売されています。試合で一度(1エンド)に射つ矢は試合形式によって3本または6本です。3本または6本の決まった本数を射ったのち、同時に射っていた人たち全員で的に刺さった矢を回収しに行きます。つまり、最低でも6本の矢を持っていないと試合に出ることができないということです。試合では4人までが同時に射つため、羽が折れたり、ときには矢が壊れたりすることがあり、予備で数本持っておくことが不可欠です。必ずしも12本持っていなければいけないわけではありませんが、試合に出場することを考えるなら9本程度は常にもっていたほうが安心です。

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ボウスタンド

【相場価格1,000円~1.8万円】
【初心者おすすめ価格帯1,000円~3,000円前後】

弓は繊細な道具であるため、「ボウスタンド」または「グランドクィーバー」と呼ばれる専用のスタンドに置きます。価格や機能によって上達や競技成績に差が出るアイテムではありませんが、高価な高機能モデルはワンタッチで開閉ができたり、弓に触れる部分がラバーで覆われて傷をつけないよう加工されていたりと、使いやすく工夫されています。特にどれを選んでも問題ありませんので、持ち運びに便利な軽さ、どっしりとした安定感、ワンタッチ開閉機能、などのなかで自分が重視するポイントをウリにしている商品を選ぶと良いでしょう。軽さならK&Kマグネチックスタンド(1,500円前後)、安定感ならWNS S-ALスタンド(3,500円前後)、ワンタッチ開閉機能ならFivicsオートマチックスタンド(12,000円前後)などがおすすめできます。

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スリング

【相場価格100円~1,000円】
【初心者おすすめ価格帯100円】

アーチェリーでは弓に不要なテンションをかけることを防ぐため、引いてから射ち終えるまで弓を手で掴んではいけません。弓を射つ際、弓を握るとその力がブレとなって矢に伝わってしまい、精度が低下する原因になります。しかしながら、そのままでは弓が地面に落ちて壊れてしまうため、それを防ぐためにストッパーをつける必要が生じます。アーチェリー用として販売されているものもありますが、多くの選手が靴紐や、平紐、ロープなどで代用しているのが現状です。細い紐の両端を結んで輪にし、弓のグリップに手を置いた状態でハンドルをまたぐように指先に縛ります。紐はスニーカー用の靴紐や量販店で売っている紐など、細く指に縛ることができる丈夫な紐であれば基本的に問題ありません。トップの選手などのなかには、伸びにくさや頑丈さを確保するため、スケート靴専用の靴紐や、アウトドア用のロープなどを使用している選手もいます。紐の長さに関しては、まずは巻き付けてピンと張ったときに、親指・人差し指の股とグリップのあいだに指2本分の隙間が空く程度に調整しましょう。短すぎると矢がハンドルを通過する前にハンドルが紐に当たってしまいますし、反対に長すぎると弓が隙間から抜け落ちてしまいます。

アームガード

【相場価格500~5,000円】
【初心者おすすめ価格帯500~2,000円】

弓を持つほうの腕(押し手)側に装着するプロテクターです。ストリングが腕に当たっても怪我をしないよう防ぎ、また衣服の袖がストリングに引っ掛かるのを防ぐ役割があります。製品によって大きさや材質などが異なります。正しいフォームが身につく前でストリングが腕に当たってしまうあいだは、幅が広く腕の広範囲をカバーしてくれる大きな製品が良いでしょう。上達したあとでも、袖が浮き上がるのを防いだり、リムに着地したあとのストリングの動きを抑制してくれたりする効果がありますので、弓を射つ際は身に着けることをおすすすめします。硬い素材の製品は直接ストリングが当たっても痛みを小さくしてくれますが、腕にフィットしづらかったり分厚かったりしてそもそもストリングに当たりやすい状況になってしまうことも多く注意が必要です。様々な形状、価格のものがありますが、腕にストリングが当たってしまう初心者のあいだは幅が広く、腕にフィットする薄い製品が良いでしょう。K&K社から発売されているKSLアームガード(2,000円前後)は薄く腕にフィットしやすい形状で初心者から上級者までおすすめできます。

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チェストガード

【相場価格1,000~5,000円】
【初心者おすすめ価格帯1,000~3,000円】

弓を持つほうの腕(押し手)側の肩から胸にかけての範囲をカバーするプロテクターです。いくつかのメーカーから発売されているものが流通しますが、形状や機能に大きな差はありません。Sサイズ~XLサイズ相当までの大きさ別に販売されており、身体にフィットするものを選びます。小さすぎると動きにくくなり、大きすぎるとチェストガードそのものが浮き上がってしまい却ってストリングが引っ掛かる原因になりますが、ある程度は紐やマジックテープなどで調整することができます。ただし、弓を引いたときに胸がストリングに当たってしまう場合はもう少し考慮が必要で、少なからず矢の精度に影響を及ぼすことになります。表面がつるつるした素材の製品を選んだり、ストリングが触れる部分に合わせてクリアファイルなどを縫い付けたりすることで、摩擦による矢のクリアランスへの影響を最小限に抑えることに役立ちます。現在国内で入手がしやすいものでは渋谷アーチェリー、エンゼル、カーテル、Fivics、Win&Win、EASTON、AVARONあたりから出ているものになるでしょうか。相場としては2,000円から3,000円前後です。価格も機能も大きな違いはありませんので、デザインや最寄りのショップで販売されているなかから選んで問題ありません。ベルトやマジックテープ、鳩目などモデルによって若干異なりますが、背中や肩周りで微調整ができます。シブヤチェストガードなどプラスチック繊維系のチェストガードは使い始めてすぐはバリッとして硬いですが、手でよくもむと身体にフィットしやすくなります。

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ストリンガー

【相場価格1,000円前後】
【初心者おすすめ価格帯1,000円前後】

弓にストリングを張る際、または弓にすでに張ってあるストリングを取り外す際に使用します。長い紐の両端に革やナイロンでできた小さなポケットがついており、製品によっては片側が細いロープになっているなどの違いはあるものの、使用方法はどの製品でも同じです。両側のポケットをリムの両端にそれぞれ引っ掛けた状態でストリンガーを踏み、弓を上に手で持ち上げます。するとリムが曲がってストリングに余裕ができますので、この状態で付外しをすることができます。ストリングを張った状態のリムには強い圧力が掛かっており、またリムは左右のねじれにも弱いデリケートな道具ですので、安全や弓の寿命のためにも必ずストリンガーを使用しましょう。なかでもHOYT社の「フォーミュラ」シリーズのハンドルはストリングの付け外しの際にリムが抜けやすく、メーカーや販売店等から注意が促されています。リムが抜ける万が一の事故に備え、ストリンガーを使用する際には近くに人がいないことを確認するほか、リムの真上に顔がこないように、覆いかぶさる(リムの真上に胸または腹がくる)ような体勢で使用します。なお、ストリンガーを使用せずにストリングを付け外ししようとしてリムやハンドルを破損した場合、メーカー保証の期間内であっても対応してもらえない場合もあります。やはり面倒でもストリンガーを使用しましょう。シャーウッドストリンガーやエンゼルストリンガーなど(どちらも1,000円前後)は定番のロングセラー商品です。

Tゲージ

【相場価格800~2,000円】
【初心者おすすめ価格帯1,000円前後】

弓の初期チューニングや組立時に弓の状態をチェックするための道具です。このTゲージ1本で、上下のリムが正しい位置にあるか、ストリングの長さや矢をつがえる位置は適切か、サイドスタビライザーが左右で同じ高さにあるか等、様々なことを確認できます。毎回、弓を組み立てるたびに使用しますので、自分用に1本持っておきましょう。
いくつかのメーカーから発売されていますが、基本的な機能に違いはありませんのでどれを選んでも問題ないでしょう。Win&Win Tゲージ(1,000円前後)など、目盛りに色がついているものが見やすくおすすめです。弓を組み立てた際にはTゲージ必ず使用して、弓が適切な状態にセッティングされているか確認します。張ってあるストリングの長さ(ブレースハイト)、上下のリムの取付け位置(ティラーハイト)、矢をつがえる高さ(ノッキングポイント)、左右のサイドスタビライザーが水平を保っているかどうかなどを、1本のTゲージですぐに確認することができます。クィーバーには製品によってTゲージを収納する部分がありますので、常に入れておくと良いでしょう。

クィーバー

【相場価格1,500円~35,000円】
【初心者おすすめ価格帯5,000円~2万円】

矢を収納し、持ち運ぶための道具です。矢は大変デリケートな道具ですので、地面に置いたり壁に立てかけたりせず、クィーバーに入れて持ち運びます。大きく分けてフックで衣服に引っ掛けるタイプと、ベルトで腰に巻くタイプがありますが、フックのタイプは収納量や使い勝手に難があるため、あくまで入門やレジャー用と考えたほうが良いでしょう。
競技として取り組む場合は少なくとも9~1ダース前後の矢を収納する可能性がありますので、ベルトで装着でき、矢筒部分が2~4つに分かれたトーナメントクィーバーがおすすめ。エンゼルクィーバーに代表されるクラリーノ製のトーナメントクィーバーは軽くて丈夫ですが、やや高価。基本的にレベルや体格によらず使用できる道具ですので、予算や好み次第では最初から高価な製品を購入するのも選択肢のひとつですが、カラーや名入れに対応したオーダー品は納期が長期に渡る場合もありますので確認しておきましょう。フックで引っ掛けるタイプのEASTONフリップサイド2チューブクィーバーで2,000円前後、人気のエンゼルクィーバーで16,000円(ベルト別・オプションなし)です。予算は抑えたいが便利なベルト式を希望の場合はEASTONフリップサイド4チューブクィーバー(6,000円前後)などの選択肢もあります。

ボウケース

【相場価格7,000円~5万円】
【初心者おすすめ価格帯10,000円~3万円】

弓は分解した状態でケースに入れ、アーチェリー場や遠征先に持っていきます。テニス用のラケットバッグなどを流用することも可能ですが、アーチェリー専用品は矢を入れるスペースがあったり小物を入れるポケットがあったりと使いやすく工夫されています。主に樹脂製のハードケースとリュック型のソフトケースがあり、用途や好みによって選ぶことができます。
ハードケースは縦に長いスーツケースのような形状で、衝撃や雨から弓を守ってくれますが、重いため基本的には備え付けの車輪で転がして移動します。鍵がかけられる製品では飛行機や海外遠征での使用にも安心感があります。
ソフトケースは堅牢性や水濡れの面ではハードケースに劣るものの軽く、リュックサックタイプでは背負ったまま自転車やオートバイに乗ることもでき便利です。また、フィールド競技では会場そのものが山中にあることが多く、そうした場所での移動にもリュックサックタイプは役立ちます。大容量のケースはスコープ用の三脚や予備の弓を入れることもでき大変便利ですが、2020年から新幹線に大型の荷物を持ち込むのに手続きが必要になるなど、使用するサイズによっては注意が必要です。ハードケースで人気のシブヤRBT-1000 EXで28,000円ほど、背負えるソフトケースのEASTON CLUB-XTリカーブパックで12,000円ほどです。

なにより大事なのは楽しむこと


お金がかかるイメージのアーチェリーですが、目的や選び方によって必要な金額に大きく差が出てくることがお分かりいただけたと思います。ただし、これまで解説してきたことも数あるひとつの道筋に過ぎません。本文中にも繰り返した通り、競技スタイルや予算、指導者の考え方によって様々な選び方・買い方があります。一番大事なのは「アーチェリーを楽しむ」こと! アーチェリーを続けていくなかで幾度となくぶつかる壁を乗り越えて思い通り射てたときの喜びは格別です。あなたが新たな仲間になってくれることを、アーチャーのひとりとして心より歓迎いたします。

最終更新:2021年4月8日
本文・編集責任:服部 亮