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DynastyOfficialBLOG 「猿腕と押手の作り方」菊地香緒里

       
アーチェリー記事

アーチェリー_押し手_猿腕_菊地香緒里

こんにちは。菊地香緖里です!
今回は私が意識している「押し手の作り方」についてお話したいと思います。

私の”猿腕”について

皆さん、私が射っている写真を見るとお分かりになるかと思うのですが、私は実は強めの"猿腕"です!

猿腕とは

「伸びきったひじ」の状態。
解剖学的にいうと、ひじが過伸展している状態。

猿腕のセルフチェック方法

手のひらを上にして、小指を合わせるように腕を真っ直ぐ前に伸ばす。

肩から肘までの間には空間が出来るものの、肘と肘がくっついて、そこから小指まではぴったりと合わさっている場合は”猿腕”の可能性あり

よく、「菊地さんって猿腕ですよね!押し手どうやって意識してるか教えてください!」
という質問を本当によくいただきます。

実は私自身、高校の部活でアーチェリーを始めて指摘されるまで、自分が猿腕だとは全く分かっていませんでした…。
だって、日常生活で猿腕で困る事が全く無かったので…(笑)

私の場合は、ひじの内側を上に向けて手を伸ばすと、ちょっとだけひじが身体の内側に曲がっているような感じです。
元々関節が少し緩いのも合わさって、弓を引くと押し手が真っ直ぐではなく曲がっているように見えると思います。

猿腕だからといって日常生活で困る事は少ないかもしれませんが、アーチェリーに関しては、猿腕の人は周りの人よりちょっとだけ努力が必要になるかもしれません。

今回は猿腕の私の場合の押し手の作り方をお伝えしたいと思います。

“猿腕”の苦悩

猿腕を人生で初めて知った高校生の私は、アーチェリーを始めてから楽しさと痛みを同時に味わうようになりました。。

私と同じ猿腕の方なら特に分かるかと思うのですが、猿腕の人が押し手のひじを通常の人と同じ状態でそのまま弓を射つと、押し手のひじの位置が身体の内側にはみ出てしまい、返り弦の通る道筋に入ってきます。

なので、高確率で

  • ・押し手に返り弦が当たって痛い!
  • ・返り弦が押し手とアームガードの間に入って痛い!
  • ・痛いのが続いて青アザになる!!

みたいな辛い状況になります。辛い(T_T)

そして、痛いからと言ってひじに弦が当たらないように逃がして射とうとすると、肩がつられて上がってしまうので残念ながらもっと激しく腕に当たります。
負のループです。。

アーチェリーを始めたての頃や練習を久しぶりに再開した時などはよく私も青アザを作っていました。

痛いのが続くと射ちたくても段々とやる気を吸い取られてしまいますよね(T_T)

この痛みを回避して気持ちよく射てるようにするには、ひじを内旋(身体の内側方向に回す)して、返り弦の通る道筋から離す必要があります。

私はアーチェリーを始めてすぐ、先生から治し方を教わり、

  • ①押し手のひじを内旋する(身体の内側方向に回す)練習
  • ②ひじを内旋したまま負荷に耐えられるようにする練習

この2つをものすごーーく沢山練習しました!!!

なぜ、すごーーく沢山練習したかと言うと、
返り弦の通る道筋からひじを離す為には、ひじを内旋した状態で負荷をかけても耐えられるようにしないといけないのですが、、

なんと、この状態を支える筋肉って日常生活ではほとんど使うことがない筋肉を使うので、何回も練習して筋肉を付けないと出来ない動作なんです!
そして支える筋肉が落ちてしまうと支えることが出来ないので、ふりだしに戻ってしまうのです!!

・・・そんな悲しい事実があり、「周りの人よりちょっとだけ努力が必要」なんです。

でも、何度も挑戦してコツを掴めば、風の吹いた時にもしっかりと耐えられる揺るぎない頑丈な押し手を手に入れることが出来ます!!

押し手を返す

まず、私が最初に練習するように教わったのは、①押し手のひじを内旋する(身体の内側方向に回す)練習 です。
この動きは、よく「ひじを返す」とも表現されます。
この練習では、その辺にある柱や壁を使って、負荷のない状態でひじを丁度いい位置に回す動きの練習をします。

やり方を説明すると、

STEP
1

柱や壁に手をつく

柱を的の方向と自分の弓と見立てて、柱と垂直に立ち、押し手の手のひらを弓を引く時と同じ角度・高さで柱に付けます。スタンスや身体の向きも弓を持つ時と同じようにして、顔だけ柱の方を向きます。

 

 

STEP
2

肘を捻る

肩が上がらないように気をつけながら、押し手のひじと手首の内側だけが地面の方を向くように身体の内側にひねって5秒くらいキープをします。
この時、手のひらはそのまま立てた形で動かさない事と、最初は自分のひじが内側に回る限界ラインをどんどん超えていくように限界までぎゅっと絞っていきます。雑巾が絞られていく時のようなイメージです!
◎ひじを返していない時

◎ひじを返した時(内旋したとき)

 

STEP
3

繰り返して感覚を掴む

10回×3セットなど回数を決めて、柱に手をつかない状態でも出来るようになるまで何度も練習します!!

 

 

最初は難しいように感じますが、何度も繰り返せば慣れてきます!

押し手を返したまま耐える

そして、内旋するやり方が出来るようになったら、
②ひじを内旋したまま負荷に耐えられるようにする練習をします。

ここからが少し大変ですが、まずはゴムチューブなどで素引をし、先程①で練習したひじの内旋がセットアップの間で弓を上げた状態から押し手の肩を決めるまでの間に出来るように練習します。

私の場合は、セットアップで弓を目線の高さに上げた所(ひじはまだそのまま)から、

肩を下に下ろす→ひじ回す→手首回す

の順で、肩から手首に向かって雑巾を絞っていくように"押し手の肩をねじ込んで決める"感じで意識しています。

最初から自分の弓でやろうとすると出来ないので、ゴムチューブ→弱いポンドの弓→自分の弓と出来るようになってきたら段々負荷を増やしていく感じで練習しました。

弓で内旋が出来るようになった時のひじの位置は、大体前腕の親指側の骨が時計の1時の針ぐらいの位置に来る所で安定しました。

ひじを回すトレーニング

そして、弓での練習と並行して、トレーニングも含めたひじを回す練習をしました!

身体を横にして床に手をついて体重をかけ、弓を引く形を再現します。
この状態の時に押し手のひじを内旋したままでキープします。

最初は10秒キープぐらいから始めて、段々出来るようになって30秒、1分、2分と少しずつ時間を伸ばしていきました。
この時も注意するのが、必ず"肩を下げて行う"事です!!

これが出来るようになれば、ほとんど完成です。
後は自分の弓を引いた時にも肩を下げた状態で出来るように毎回意識をしてやり続けるのみです。

意識しなくても出来るぐらいまで身体にしみ付けば、押し手の肩と腕がロックされたみたいに関節同士がしっかりはまったような感じになって、弓の力をしっかり肩から支えられるようになります。

風にも耐えられる頑丈な押し手を手に入れて、頑張っていきましょう!

おまけ
青アザが出来てしまったら、アイシングをして冷やしましょう~!!

 

\ 最強の押し手を手に入れよう /

この記事を書いた人


菊地香緒里
プロフィール画像提供:株式会社レオ・プランニング
旧姓:川中。2012ロンドンオリンピック銅メダリスト。70mラウンド元日本記録保持者。
鳥取県出身。近畿大学卒。米子南高校入学とともにアーチェリーを始める。高校生のころ、インターハイ団体と国体で優勝。近畿大学進学後、ロンドンオリンピックで日本女子史上初のメダル獲得を果たす。
卒業後は株式会社ミキハウスに所属し、世界室内で団体優勝、リオデジャネイロオリンピック出場、アジア選手権団体3位、全日本選手権優勝等。退社後はジュニア選手の指導や運営スタッフとして等、競技の普及や発展に尽力している。