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DynastyOfficialBLOG 「左右転向という選択」小笠原琢磨

       
アーチェリー記事

小笠原琢磨_左右転向_アーチェリー

”左右転向”とは文字の通り右射ちや左射ちだった選手がその射ち手を変えることです。

高校時代に肩を壊したり、大学に入って肩を痛めたという選手がどこの大学にもいると思います。
愛知産業大学も例外ではなくそういった選手はいました。

自分が指導者をしている愛産大では過去に首のヘルニアと高校時代の無理な射ち方で腱板損傷により左右転向した選手がいました。自分を含めて三人の左右転向を見てきました。
この二人の選手は後に、左右転向した状態で全日本へ出場できるほど上手くなりました。

その経験から、最終選択肢である左右転向のざっくりとした手順と方法を書いていきます。

選手を観察し、対話する

まず初めに、怪我は痛くなった時点で早めに医者に行かせるのが大切で、誤魔化しながらうたせることは絶対してはいけない。まずは”休ませる”べきです。

アーチェリーは使うところが限定されているため、人によって怪我をしやすい人はいます。
逆に全然怪我をしない選手もいます。1日400本射っても痛くならない選手もいます。

全員に同じ射ち方をおしえるのではなく、その人が使いにくそうにしている部分を見極めて楽にうたせてあげると怪我を防ぐことができます。

そのためには、指導者はその選手がどう射っているかをしっかり分析し、自分でもイメージし対話することが大切です。

基礎を一つひとつクリアしていく

左右転向で大切なことは基礎をしっかり行うことと細かい所を意識させないことです。

動画などを見た際に肩の位置やアンカリングの位置を細かく気にしようとしますが、無視させることが大事です。左右をかえると感覚が分からなくなるのは当然であるので、大まかな形だけ注意して細かいことは後々詰めていくほうが混乱しません。

まずは、チューブやポラリスで形を作っていきます。ある程度の形ができたら実際に18mを射たせます。
元々射っていた経験がある為、形作りに四苦八苦することはあまりないと思います。

大切なのはポラリスの段階でしっかり形を作り、弦サイトや取りかけなどをできるようにしておくことです。

18mは、最初マルチ的で射たせましょう。
自分は三つ目から始めてしまったため的が小さく、狙いこんで大きく射てなかったので、学生にはマルチで射たせています。

大体の選手は的を狙うことで、動きが小さくなってしまいますが、18mでマルチ的を射つと的が大きくなるため、動きが小さくなりません。
これは30mでも青などに外す選手に「30mを70mの的で射たせてみるとほとんど10点に近い黄色に入れる場合もある」という指導経験からそうしました。

あえて50mは射たせない

最初は大きな的でクリッカーの切り方を覚えてもらうと、近射とはまた違う成果がでます。
18mマルチで320点くらい出るようになったら30mを射たせましょう。
的を狙いだしてから、ラインの取り方を教えます。体の向きを的にまっすぐにするイメージで射たせるようにしましょう。

無理に肩を落とそうとすると押手に力が入り、引手もうまく使えなくなってしまいます。
左右転向した選手全員がそうだとは思いませんが、押手の肩は非常に落としずらいため無理に落とそうとするのは良くないと思います。

ラインがうまく取れるようになってくると30mの点数は格段にあがり、70mを射てるようになります。
ここで50mは射たせないほうがいいです。なぜなら、的が小さく見える難しい距離だからです。
なるべく大きく射てることを意識したいので、的が小さく見えて難しい50mはスキップしましょう。
70mになると格段に難しくなりますが、当たらないからといって大きく射ち方を変えないように同じことをやり続けるようにしていくことが大切です。

リリースは”直す”ものではない

リリースは勝手にラインが綺麗になればうまく抜けるようになるので、リリースだけを直すのは良くありません。

これは全ての選手や指導者に言えることだと思いますが、リリースは”最後の部分”でありリリースだけを直そうとしてもほとんどの場合はうまくいきません。
スタンスやセットから綺麗に整えていき、最後によくなるのがリリースだと考えています。

左右転向は、ほとんどの場合利き手ではないため、器用さは利き手には及びません。
フォロースルーの意識を変えることはありましたが、リリースは自分自身も含めほぼ直していません。

“左右転向”を選んで
伸びる選手生命

怪我をしてうまく治らずアーチェリーを諦めてしまう話はよく聞くと思います。
左右転向の選択は、趣味ではなく選手としてやっていた人にとって簡単な選択肢ではありません。

しかし、思っているほど時間はかかりません

ちゃんと指導ができる人がいるに越したことはありませんが、今はSNSにうまい選手や指導者がいる時代です。そういった人に自分の悪い点の直し方を聞きながらチャレンジしてみるのもいいと思います。

選手としては、怪我をしたままで頑張ることが悪いわけではありません。
怪我をしながらトップにいる選手はたくさんいるし、それがその人の選択肢ならいいと思います。
しかし、志半ばで選手をやめてしまう前に”最後の選択肢”として、左右転向があるということが伝わると嬉しいです。

自分も含めて指導者には最後の選択肢として左右転向を勧める勇気をもってもらいたいですが、それ以上に左右転向するような状況に選手を追い込まないように勉強をし、今ある知識だけが全てではなくほかの競技と同じくアーチェリーも時代と共に、また点数帯と共に教え方が変わっていくのだということを改めて考えてほしいと思います。

\ 左右転向の一歩目に /


この記事を書いた人


小笠原琢磨

愛知産業大学職員。静岡県出身。同学卒。アーチェリー選手であった父の勧めで中学1年生のとき競技を始める。キャデット部門(小・中学生部門)のころ全日本キャデット選手権優勝。高校進学後、新潟国体優勝、アジアグランプリ出場等、数々の主要大会で輝かしい成績を収めるが、同2年生のころ右肘を故障。愛知産業大進学後、左右転向し、選手としてナショナルチームや世界室内選手権の選考会に出場する傍ら、同学チームのコーチを務めた。卒業後は同学専任のコーチとして女子王座入賞、インカレ入賞、U-20入り等に導く。また、自身と同様に左右転向をせざるを得なかった選手を全国大会へ復帰させ、そのノウハウは専門誌でも掲載された。

また次の投稿でお会いしましょう!