こんにちは!菊地香緖里です。
現在のアーチェリー競技は、リカーブのシニア層では主に70mの距離で試合を行うことが多いかと思います。
しかし、年代によっては部門や大会で様々な距離を射つ機会もあると思います。
皆さんは、得意な距離や好きな距離はありますか?
_____私は、距離では50mが好きです!
今回は、私が考える「距離別の当て方」をご紹介したいと思います。
距離は違くても同じように射てばグルーピングは同じ
私は、距離によっての当て方の違いは「ほとんど無い」と思っています。
ただし、「意識をするポイント」は少し違うかなと思います!
狙う距離によって、的の大きさやサイトピンの高さはそれぞれ違いがあるかと思うのですが、私自身の基本的な考え方としては、“どの距離も同じ”ように射つようにしていました。
ですので、距離によって射ち方を変えることはしていません。
私が考える「当てるための練習」は、矢がバラバラな中でも10点に入る本数を多くするのではなく、矢の集まり(グルーピング)を作り、それを小さくしていくという事を念頭に置いて考えています。
その上で、風や雨などの外的要因が一切ない状態で考えると、「近い距離で1本1本同じ射ち方をし、矢が集まれば、距離が離れても同じように射つことで矢は集まる」と思っています。
つまり距離が離れるほど、矢は風や雨など他の力の影響を受けるので狙いから外れていく事もありますが、基本的に無風快晴の状態であれば、短い距離と同じように射てれば距離が離れてもグルーピングは同じ(または近い)であると考えます。
なので、現役時代には、いきなり70mで当てる練習をするのではなく、まずは30mなどの近い距離でグルーピングを小さくするようにして、問題なければ遠い距離でも同じ射ち方で練習を行う…といった考え方で練習を行っていました。
「意識するポイント」は「意識できる距離」で
冒頭で「意識をするポイント」は違うとお話しましたが、それはサイトピンの高さが変わるのに合わせて押し手の肩の高さの違いや風の影響も加わるからです。
人それぞれ考え方は違うかと思いますが、私の場合は、
- 18m~50mまでの近い距離では特に押し手を大切にして意識をする
- 60m~70mなどの遠い距離では引き手(リリース)もバランスを取りながら意識する
という考えで練習していました。
私は、自分自身の射ち方では押し手の安定感が重要なポイントだと考えているので、身長的にも狙う時の肩の高さが丁度よく、かつ押し手をしっかりと意識しながら射つことの出来る50mが好きでした!
昔は、「距離は遠いのに的は小さいし苦手だな~」と思っていましたが、自分の射ち方の意識と当たりが上手くハマって、「50mでこの意識で同じように射てたらどの距離でも当たる!」と思った瞬間があり、それから50mが好きになりました。
近い距離で「射法八節」を意識してみる
皆さんは「射法八節」という言葉をご存知でしょうか?
「射法八節」とは、弓道での弓を引くための基本的な動きの事ですが、アーチェリーでも同じように基本的な動きが8つあります。
- スタンス
- セット
- セットアップ
- ドローイング
- アンカリング
- エイミング
- リリース
- フォロースルー
以上の8つの動作になります。(※諸説あり)
私は、近い距離での練習では、この8つの基本動作を上から順番に確認して練習を行います。
これが一つ一つ順番に安定していくようになると、少しずつ矢の集まり(グルーピング)もできていきます。
そして、サイトを合わせてグルーピングの位置を的の真ん中に持ってくる事ができれば、自然と点数も上がっていきます。
この時に、短い距離では特に①スタンス~⑥エイミングまでが安定していないと、距離が離れた時にミスの度合いも大きくなってしまうという印象です。
ですので、近い距離を射つ時には特にスタンスからの組み立てや、押し手の安定感を意識しながら射っていました。
私は、アーチェリーを始めた時でもオリンピックに出られるようになった時でも、常に基礎を大切にしています。
60m~70mなどの遠い距離では、全体のバランスを考えつつ、近い距離よりもリリース、フォロースルーまで細かく意識をしていました。
具体的には、矢が的に到達するのを見届ける所まで注意を払って射つように心がけていました。
それは、距離が離れた分、風や雨の影響を強く受けるようになっていくので、矢が自分の手・弓から離れるギリギリの所まで安定した状態を作るための意識です。
遠い距離になるとサイトが下がり、押し手の位置が肩よりも高い位置に来るため、近い距離を射つ時よりも身体のバランスが取りずらくなります。
片手で重いものを持つ時に、身体の横で持つのと、目線の高さで持つのとはふらつき具合が全然違うのと同じ感覚です!
なので、体幹がふらつかないようにしながら、矢が的の中心に刺さるのを見届けるまでフォロースルーを残して「入れ!!」という意識を注ぎ込みます。
①スタンス~⑧フォロースルーまでをしっかりと意識しつつ、それにプラスして風の影響があればエイムオフ(わざと狙いをずらして風に乗せて真ん中に入るようにする)をしたりすることも必要です。
このように、距離が遠くなるほど意識をする部分も増えていくので、難易度も上がります。
トップ選手になるほど、これを毎回意識しなくても動きが出来るようになるまで練習し、身体に染み込ませている…という感じがします。
どの距離でも、やはり基礎である8つの動きが大切であると思います。
迷った時は基本を確認して、レベルアップしていきましょう!
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プロフィール画像提供:株式会社レオ・プランニング
旧姓:川中。2012ロンドンオリンピック銅メダリスト。70mラウンド元日本記録保持者。
鳥取県出身。近畿大学卒。米子南高校入学とともにアーチェリーを始める。高校生のころ、インターハイ団体と国体で優勝。近畿大学進学後、ロンドンオリンピックで日本女子史上初のメダル獲得を果たす。
卒業後は株式会社ミキハウスに所属し、世界室内で団体優勝、リオデジャネイロオリンピック出場、アジア選手権団体3位、全日本選手権優勝等。退社後はジュニア選手の指導や運営スタッフとして等、競技の普及や発展に尽力している。